競馬で、馬の世代間の比較をどうやって行うのか、という話。

最強世代はどれか?という所謂「最強世代論争」というのは良く行われます。明確な答えがないから終わらないんでしょう。
しかし、そこに少しでも客観性を持たせたいという試みは無為ではないでしょう。
2020年の東京大賞典終了時点での話。

という事で簡単に出来ることを。

それは、
「各世代の古馬G1での勝利数を比較する」
という方法。

もちろん世代限定G1の数は同じなので、世代ごとの総G1勝利数を数えている事と同型ですが、世代限定G1を入れると差が見えづらくなってしまうのです。
ちなみに2・3歳限定のG1(とJpn1)は
芝で9戦(阪神JF・朝日杯FS・ホープフルS・NHKマイル・牡牝3冠)
ダートで2戦(全日本2歳優駿・JDD)
あります。
 
もちろんこの方法には問題点があって、
① G1だけを数えるのは適切なのか
② 1着だけを数えるのは適切なのか
③ 前後2-3世代との比較をしているに過ぎないので、前後の世代が弱ければ過大評価される危険も 
などがあるでしょう。なのでそういうものだという事を念頭に置いておく必要があります。
ただ、タイムで比較する、とかよりは安定的な方法でしょう。



それでは結果です。2020年の東京大賞典まで集計しています。

*「○○世代」は、その年にクラシックを戦っていた世代を指します。(例:去年の3歳馬は2018世代)代表馬として挙げているのは、対象の競走を2勝以上している馬です。
*1998年以降のG1について、1998世代以降のみを集計しています。それ以前の世代については調べていません。
*1998年以降(2019東京大賞典まで)のG1(及びJpn1)について、1998世代以降のみを集計しています。それ以前の世代については調べていません。
*集計対象は平地の競走のみで障害G1は入れておらず、
芝のG1(高松宮記念・大阪杯(2017~)・天皇賞春・ヴィクトリアマイル(2006~)・安田記念・宝塚記念・スプリンターズS・天皇賞秋・エリザベス女王杯・マイルCS・JC・有馬記念)と
ダートのG1(ダートグレード競走含む;フェブラリーS・チャンピオンズC(2000~)・東京大賞典・川崎記念・かしわ記念・帝王賞・マイルCS南部杯・JBCレディス(2013~)・JBCスプリント(2001~)・JBCクラシック(2001~))
です。最近になるほど少しずつ多くなる傾向があります。
*2017年以降は、芝12競走・ダート10競走が集計対象なので、世代の平均値はこれになりますが、外国馬が勝った場合はどの世代にもカウントしないので、その分だけ数が減っています。
*海外G1は古馬混合戦のみ集計しました(有力馬が海外遠征すると、その分世代のG1勝利数が見かけ上減ってしまうため)。AWのDWCは便宜上芝に含めました。コリアC・コリアスプリントは含めていません。
*新しい世代はまだG1を勝てる現役馬がいるので、これから増える可能性があります。
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見辛いので、グラフにしました。
gen2


 
芝では1998世代・2004世代・2007世代・2011世代・2012世代・2014世代・2018世代が優秀だったという結論に。

特に2011・2012は上下の世代なので勝ち星を奪い合っているはずなのにこの数字。オルフェーヴル・ロードカナロア・ジェンティルドンナ・ゴールドシップで勝ちまくりました。これらの世代は超一流馬の故障や離脱が殆ど無かったという特徴があります。
 オルフェーヴル:5歳までで21戦
 ロードカナロア:5歳までで19戦
 ジェンティルドンナ:5歳までで19戦
 ゴールドシップ:6歳までで28戦
これらに加えて2012世代はジャスタウェイが5歳までで22戦、ヴィルシーナが5歳までで21戦、ストレイトガールが7歳までで31戦しており、フェノーメノも6歳まで18戦。各路線に有力馬が居て、複数年に渡って活躍しました。天皇賞春はこの世代が2013-2015まで3連覇、ヴィクトリアマイルは2013-2016でこの世代が4連覇しています。もちろん故障した馬もいましたが、結果的に古馬で一戦級を張る馬は離脱しませんでした。ディープブリランテくらいでしょうか。

2018世代はまずアーモンドアイが6勝を稼ぎ出していますが、それ以外にもラッキーライラックが3勝にインディチャンプ、フィエールマン、ノームコアが2勝ずつなど、層の厚さが光ります。
一つ下のクロノジェネシスを含めて、ここ数世代は牝馬がどれだけ勝てるかで決まっているんじゃないのか、と言いたくなりそうですが、それはまた別の話として。


1998世代はスペシャルウィーク・グラスワンダー・エルコンドルパサー(いわゆるエル・グラ・スペ論争)に加えてエアジハード・アグネスワールドもG1複数勝利。1つ下にはテイエムオペラオーがいますが、4歳(現表記)時に勝ちまくりました。

2004世代はダイワメジャーにハーツクライ・カンパニー・ハットトリック・スイープトウショウ。ここも同じく下にはディープインパクトがいますが、海外G1を4勝にカンパニーの8歳時の2勝と色んな所で稼ぎました。

2007世代はウォッカとダイワスカーレットにドリームジャーニー、ローレルゲレイロ。この世代は5歳時に芝G1を8/11と一番勝っているのですが、すぐ下の2008・2009世代がパッとしない事とも関係がありそうです。

そして、この2008・2009世代が苦しい。2009はブエナビスタが孤軍奮闘しましたが、他に古馬混合G1を複数勝利した馬は、この2世代にはいません。これらの世代は2007年夏の馬インフルエンザ流行の影響を一番受けている(牧場で育成されているいちばん重要な時期に移動制限等の影響を受けた)のではないかと考えられ、これが影響しているのかもしれません。これについてはその内もう少し検証するつもりです。

古馬になってから躍進した2014世代。6勝のモーリス、マリアライトとエイシンヒカリが2勝ずつ。海外G1を5つ勝っているのは全世代中で最多です。クラシック組が尽く善戦マンか燃え尽き症候群になってしまっているのと対照的です。クラシック組の勝ち数が1勝で、これだけ数字を伸ばしているのはある意味驚異的なことです。クラシック組以外の活躍・海外で荒稼ぎというのは、これからのトレンドになるのでしょう。



次はダート。こちらは2002・2005・2008・2012・2013世代が活躍。
2002世代はアドマイヤドンとゴールドアリュール。
2005世代はカネヒキリ・ヴァーミリアンにボンネビルレコード。
2008世代はエスポワールシチーにスマートファルコン。
2012世代はホッコータルマエにサンビスタが複数勝利。
2013世代はコパノリッキー・ベストウォーリア・サウンドトゥルー。
割と周期的なのが面白いですね。
上で挙げた馬インフルエンザの影響はこっちでは全く感じられません笑

ダートと芝のG1勝利数を合計すると、芝・ダートそれぞれでは世代間で5-10倍程の格差があったのが、2倍程度に収まります。これは、G1を勝つという事には限られた(数頭から十数頭?)卓越した個の存在が重要で、各世代に必ず卓越した個は存在するが、それがダートにいるか芝にいるかによって結果が変わる、という事なのでしょうか。
また、有力馬が故障するorしない、という要素も当然重要になってきます。

ダートでも2018世代は頑張っています。まだ勝ち星を伸ばせる余地があるので、12-13勝くらいまで行けるかもしれません。

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そして上の結果からは、単純に芝とダートを合計すると
 
 2012世代が最強

という結論に。G1の数が時期によって数個違う事を考慮しても、この結論は変わらないでしょう。
確かに華やかな世代だったと思います。

昨年の集計時との違いとしては、2018世代が勝ち星をさらに伸ばし、芝ダート合計で1勝差に迫ってきているという点。
アーモンドアイは引退しましたが、特にダートではオメガパフューム、チュウワウィザードらがまだ勝ち星を伸ばす可能性は十分にあるでしょう。来年には「2018世代が最強」という結論になる可能性があります




(おまけ)
世代ごとの古馬混合G1勝利数を、年齢別で平均するとどうなるのか集計してみました。
(2020年末までにその年齢になっていた世代のみでの集計です。例えば5歳時ですと2018世代までの平均です)

<芝のみ>
3歳まで 1.2
4歳まで 6.2
5歳まで 10.6
6歳まで 12
(全体 12.4)

<ダートのみ>
3歳まで 0.6
4歳まで 2.6
5歳まで 5.7
6歳まで 7.4
(全体 9.1)

<芝ダート合計>
3歳まで 1.8
4歳まで 8.8
5歳まで 16.2
6歳まで 19.4
(全体 21.5)

芝は4歳、ダートは5歳が一番勝てる時期という事が分かりました。ダートG1は賞金の関係で、3,4歳馬が出走する事自体が難しいという背景があると思います。
ダートの方が高齢馬の活躍の余地があるのかな、と思っていますが、7歳以降の期待値は芝の0.4に対して1.7とイメージ通りの結果でした。


これらを用いて、最近の世代のレベルをこれまでのG1勝利数から推定することが出来るかもしれません。やってみましょう。
※注意:G1の総数が集計期間中にいくらか増加しているので、特にダートでは最近の世代の方がG1勝利数の面で有利であることに注意。

gen3

グラフにするとこんな感じに。
折れ線が期待値、棒グラフが期待値からのずれです。0より大きいのは期待値より多く勝っているということ。

こう見ると、2018世代は期待できそうです。
と昨年書いた通り、2018世代は大きく勝ち星を伸ばしてきました。

2019世代は今のところ期待値通りという感じです。2018世代の有力馬が抜け始める来年、G1をいくつ勝てるのか、注目しておきましょう。



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